亡くなった人の財産を相続したくない場合 相続の放棄
相続の放棄
相続の放棄とは バックグラウンド
相続の放棄とは、相続の効果を確定的に消滅させる相続人の意思表示のことです。
相手方のいらない一方的な法律行為のため単独行為とよばれます。
放棄の意思表示には行為能力が備わっていることが要件となります。
ここで意思表示といっても、「放棄したい」と声に出すだけではもちろん効果はありません。管轄の家庭裁判所の手続きを経て、はじめて効果が生じます。
相続の放棄は、かつて農業や家業を一人の子供がすべて受け継ぐ「一子相続性」の受け皿として多用されていましたが、1925年の相続税法改正で一人に相続を集中させた場合に税率があがるような仕組みになったので、相続の放棄は激減しました。
しかし実際には、これに代わり遺産分割により水面下で実質的に一人に相続財産を集中させることが行われ始めたといわれています。
もっとも、現行の相続税法では相続の放棄があっても相続人としてカウントされ基礎控除の人数はそのままで計算されるので、相続の放棄をしても納税面でのデメリットはなくなったといえます。
相続放棄のメリットとデメリット
相続放棄を選択する前に、メリット・デメリットを把握することが重要ですので確認しましょう。
メリット
①借金の返済義務がなくなる
②相続トラブルから解放される
(相続人同士で揉めている場合にそこから離脱できる)
デメリット
① プラスの財産も一切受け取れない
(借金だけでなく不動産や預貯金などプラス財産もすべて手放すことになる)
② 原則として一度受理された放棄は撤回できない
たとえ熟慮期間が残っていても認められません。
ただし、意思表示の瑕疵があったり、制限行為能力者によるものであったとき、詐欺・強迫によるもであったときなど、取消しできるケースもあります。(家庭裁判所での手続き要)
「3ヶ月(熟慮期間)」基本ルール(民法915条)と 例外
相続放棄ができる期間(熟慮期間)は、法律で定められています。
起算点
「自己のために相続の開始があったことを知った時」単なる被相続人の死亡の事実だけでなく、その相続について自分が相続人となったことを知ったことまで必要とされています。
期間
起算点から3ヶ月以内
起算点についての注意
〇被相続人の借金などが、預貯金などのプラスの相続財産を上回っている場合で、相続人がそれを知らずに3か月経ってしまったとき、判例(裁判所の見解)では相続人が相続財産の調査について調べることが困難であったこと、また、相続財産がないと信じてしまう正当な理由があったときなど例外的に相続財産を認識したときを起算点と認めることもあります。
〇相続人が制限行為能力者(未成年者や成年被後見人など)のとき
未成年者の場合は親が、成年被後見人の場合は成年後見人が相続の開始があったことを知った時が起算点になります。
〇共同相続(複数の相続人がいる)のとき
熟慮期間は相続人ごとに個別的にみます。
〇特定非常災害(たとえば大震災など)のあったときには「特定非常災害特別措置法」に熟慮期間の特例が規定されています。
〇財産の調査に時間がかかり3ヶ月以内に決断できない場合は、熟慮期間内に家庭裁判所へ期間の伸長を申し立てることで、期間を延長できる可能性もあります。
相続の放棄の効果
〇相続の放棄が受理されると、放棄した者ははじめから相続人でなかったものとみなされます。
効果は絶対的であり、放棄したものは無権利者となり、登記などの対抗要件は不要です。
たとえば放棄した者(Xとします)の債権者(A)が現れてXの法定相続分の範囲で持ち分を差し押さえられても、Xは放棄が受理された時点で無権利者となるのでAは保護されません(救われません)。
〇放棄した者の相続資格のゆくえ
・血族相続人の同順位の者が他にいるときはその者が取得する
(複数いるときは人数で等分される)
・同順位の者が他にいないときは次順位へ移る
・代襲相続は不可
〇相続の放棄をした者が放棄後も相続財産の一部でも現に占有(所有権はないけど事実上の支配をしているとき)していれば、相続人または相続財産清算人※に対して当該財産を引き渡すまでの間、自分の物を扱う時と同じくらいの注意力でその財産を保存しなければならない
※相続人の存在・不存在が明らかでないときなどに利害関係人や検察官によって申立てでき、家庭裁判所は相続財産清算人を選任します。被相続人に借金などがあり債権者がいるときはこの清算人が相続人のかわりとなり支払い等をします。(相続財産が余った場合は国庫に帰属)
相続放棄の手続きの流れと必要書類
手続きの流れ
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財産調査: プラスの財産とマイナスの財産をできるかぎり調査
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必要書類の収集: 被相続人の住民票除票や戸籍など必要なものを調べて収集
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申立書の作成: 裁判所指定の「相続放棄申述書」を記入
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家庭裁判所へ提出: 故人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所に提出
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裁判所から問い合わせ(あれば)裁判所から電話等で質問や追加資料の提出が求められることもあるので、その場合はきちんと対応
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受理通知書の受け取り: 裁判所から「相続放棄申述受理通知書」が届く
必要書類(共通のもの)
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相続放棄申述書(裁判所のHPからダウンロード可能)
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被相続人の住民票の除票または戸籍の附票
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申述人(放棄する者)の戸籍謄本
※他の必要書類は相続人の状況により異なりますので裁判所のホームページで確認しましょう。
ほか収入印紙(800円分)および 連絡用郵便切手
相続の放棄における注意点
以下の行動をとると、法律上「遺産を相続する意思がある(単純承認)」とみなされ、相続の放棄ができなくなるため注意が必要です。
*相続財産の全部または一部を処分(使用・売却・廃棄・破損など)したとき
ただし、たとえば当人が受取人に指定された生命保険金は固有財産のため相続財産の処分には当たりません。
また、たとえば当人が相続開始の事実を知らなかったときに被相続人の死亡後にたまたま何十年も前にあずかっていたものを処分した場合などはここでいう相続財産の処分に当たらないという見解です。
いかがでしたでしょうか。個々の状況によって判断が難しい場合もあります。お悩みの際は当事務所でもご相談を受け付けております。
お気軽にお問合せください。
【この記事の監修者】
吉川 麻知子(行政書士吉川麻知子事務所 代表)
神奈川県行政書士会所属(登録第26092019号)
横浜市南区・港南区を中心に、相続手続き・遺言・老後対策に重点をおいて業務を行う。
女性ならではの、きめ細やかな視点でお客様に温かく寄り添い、丁寧親切をモットーに親しみやすい雰囲気をもつ行政書士。
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