相続で債権者を保護する制度もある? 「財産分離」
財産分離 (民法941条)
財産分離とは
相続の「財産分離(ざいさんぶんり)」とは、亡くなった人(被相続人)の財産と、相続人個人の財産が混ざり合うことで被相続人や相続人の債権者が不利益を被らないように、相続財産と相続人の固有財産を分離・管理し、清算する制度です。
つまり、放棄や限定承認が相続人側を保護するものであるのに対して、財産分離は債権者側を保護するものといえます。
請求者は被相続人や相続人の債権者・受遺者等で、相手方は相続人です。請求者は家庭裁判所に申立てをします。
①相続財産については、被相続人の債権者・受遺者が相続人の債権者に優先します
②相続人固有の財産については、相続人の債権者が被相続人の債権者・受遺者に優先します。
制度内容が非常に複雑である上、相続財産の破産制度も別であるので、財産分離の利用者はとても少ないのが現状です。
年に数件程度の利用しかありません。
また、相続発生を機に相続人の固有財産にも影響が出る制度なので、家庭裁判所は要件があえば受理するのでなく、必要性や合理性を考慮した上での判断が問われます。
財産分離の2つの種類と目的
財産分離には、2つの種類があります。
①被相続人の債権者・受遺者を保護するためのもの(第1種財産分離)
被相続人には多額のプラス財産があるものの、相続人自身が多額のマイナス財産を抱えている(または破産寸前)というケースで使われます。
〇申立て人 被相続人の債権者・受遺者
〇請求期間 相続開始の時から3か月以内
〇目的 遺産が相続人の借金返済に使い込まれる前に遺産を切り
離し、そこから優先的に借金を返してもらうため。
② 相続人の債権者を保護するためのもの(第2種財産分離)
相続人自身は財産を持っているものの、被相続人は多額のマイナス財産を残したケースで使われます。
〇申立て人 相続人の債権者
〇請求期間 相続人が限定承認をすることができる期間または相続
財産が相続人の固有の財産と混ざらない間
〇目的 相続人が亡くなった人の借金等を背負い込むことで、
元々相続人が持っていた財産まで亡くなった人の借金
返済に充てられるのを防ぐため。
限定承認と異なる点
◉限定承認では被相続人の(プラスの)相続財産からのみマイナスの相続財産を清算するが、財産分離では相続人固有の財産も清算の対象となる点
◉限定承認では被相続人のマイナス財産がプラス財産を超えている場合に利用されるが、財産分離では相続人固有の財産がマイナスの場合にも利用される点
いかがでしたでしょうか。利用がほとんどないので世の中でこの制度を知る人はとても少ないでしょう。
ですが、債権者側から相続人へ申立てできる制度もあるんだなと少し知っておくことも大事だと思います。
最後までお読みくださりありがとうございました。
(一部編集しました2026.9.29)
【この記事の監修者】
吉川 麻知子(行政書士吉川麻知子事務所 代表)
神奈川県行政書士会所属(登録第26092019号)
横浜市南区・港南区を中心に、相続手続き・遺言・老後対策に重点をおいて業務を行う。
女性ならではの、きめ細やかな視点でお客様に温かく寄り添い、丁寧親切をモットーに親しみやすい雰囲気をもつ行政書士。
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